ホンリョン東京海上タカフル・ゼネラルマネジャー・綾部敦彦さん

[第319回]一橋大学経済学部卒、学生時代はボート部に所属。1989年に東京海上火災保険(現東京海上日動火災保険)入社。地元の神奈川県平塚で地域営業の後、東京本店で倉庫・リース業向け法人営業、97年からアジア部でアジアの生保市場調査を担当。2000年からサウジアラビア、04年からシンガポール駐在。06年7月から現職。趣味はギター演奏・鑑賞。

イスラム保険で欧米勢に先行「身近に感じたイスラム伝えたい」

2009/7/30

ホンリョン東京海上タカフル・ゼネラルマネジャー・綾部敦彦さん[

■イスラム保険で欧米勢に先行

東京海上グループはイスラム金融に対する世界的な関心が高まる以前の2001年、欧米勢に先んじてサウジアラビアでタカフル(イスラム保険)事業に参入した。マレーシアではホンリョン・グループとの合弁で06年に創業。先ごろ3周年を迎えた。綾部さんは、同社のタカフル事業のキーパーソン。サウジアラビアに駐在していた2000年、現地法人の合弁相手から「イスラム金融は成長する」との提言を受けて調査に着手。わずか1年で事業化した。マレーシアのホンリョン東京海上タカフルでも、設立以来中心となって活躍している。

サウジアラビアでは、大手銀行を手始めに御用聞きに回ったところ、最大手のサウジアメリカンバンク(現SAMBA)から声が掛かる。提携先を探していたが地場タカフル会社の信用に疑問を抱いていたところ、東京海上なら信頼できると判断したという。綾部さんは「日本のメーカーが築いた日本の品質に対する信頼のお陰」と振り返る。同行の扱うイスラム式の自動車ローンや家具・家電向け融資に付帯する生命保険を手掛けた。

「グローバルな保険会社でタカフルを始めたのは東京海上が最初。欧米系のAIGやプルーデンシャルが後から続いた。日本の金融機関はイスラム金融で遅れているというが、タカフルに関しては日本がリードしている」

■マレーシア事業好調

その後、シンガポールのリタカフル(イスラム式再保険)、インドネシアのタカフル部門の立ち上げを支援し、マレーシアでタカフル事業免許を取得したことを受けて2006年にクアラルンプールに赴任した。「マレーシアは国を挙げてイスラム金融、タカフルで世界の確固たる地位を築きたいという切なる願いがある。当社は早くに参入したことで、中央銀行に大事にしてもらっており、追い風になっている」

ホンリョンの銀行窓口などを活用してイスラム式住宅ローンに付帯する生命保険、火災保険をはじめ、3年満期の投資型商品も販売。今後は安定成長に向け、一時払い商品から月払いの生命保険商品に軸足を移す方針。自前の代理店を現在の500人から1年間で1,500人まで増やす計画だ。

東京海上は昨年、エジプトでもタカフル免許を取得。タカフル先進国のマレーシア人も現地で立ち上げに参加している。ドバイで2年前に設立したトウキョウ・マリン・ミドル・イースト(TMME)にグループのノウハウを集約して、新規事業の立ち上げ支援やノウハウ提供を行う構想も描く。自身も「マレーシアで蓄積したノウハウを、ドバイなどで次の展開に生かしたい」と意欲を示す。

■イスラムと日本の架橋に

「これから4人に1人がイスラム教徒になる時代。中国、インド、イスラム教徒がビジネスのキーワードになる」。各地で地場密着型の事業を手掛けてきた経験から、イスラム教への理解がビジネスに欠かせないと考える。「中東の人は自分たちがアジア人だと思っていて、日本人に親近感をもっている」と感じる一方で、「日本でイスラム金融というと、オイルマネーを取り返すという意識が強すぎる印象がある。日本国内にイスラム教徒が少ないこともあるが、イスラム教徒に役立つという視点が欠けていたら、心理的な距離感がいつまでも埋まらない」と問題意識を持つ。

マレーシアは65%がイスラム教徒で、この季節にはアラブ人旅行者も大挙して押し寄せる。「この国に駐在している日本人として、身近に感じたイスラムを正しく日本に伝えていく役割があるのではないか」。(マレーシア編集部・八木悠佑)

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