シンガポール 2011年11月25日(金曜日)
近江牛拡販、知事が売り込み:輸出8割消費、食べ方多様化を[農水]
滋賀県は近江牛の本格輸出に向けて、シンガポールで売り込みを図る。25〜26日に嘉田由紀子知事がトップセールスを展開するほか、近江牛輸出促進実行委員会が商談会を実施。購買力の高いシンガポールは近江牛の輸出頭数の8割強を占める重要市場であることから、人気の高いステーキ部分に加えてより幅広い部位の拡販を推進。福島第1原子力発電所事故の風評被害も収まりつつあり、近江牛ブランドの認知度向上を目指す。
嘉田知事が牛肉のトップセールスでシンガポールを訪問するのは初めて。25日に農畜産物管理庁(AVA)などを訪問。夜には政府関係者や業界関係者を招いたレセプションで自ら近江牛をプレゼンテーションするほか、試食会も開いて多様なレシピを紹介。近江牛の歴史や味だけでなく、放射性物質の全頭検査を実施していることなど安全性もアピールする。26日には地元の食肉加工施設や伊勢丹シンガポール、和食レストランを訪れ、近江牛の魅力を直接消費者にPRする予定。また県、生産団体などで組織する近江牛輸出促進実行委員会や輸出業者らは、25〜26日に地元の飲食業界関係者などを集めた商談会を開き、販路開拓を目指す。
滋賀県農政水産部畜産課の担当者は、NNAに対し「(近江牛の輸出を開始した)昨年から現在までの累計で海外には219頭を輸出したが、このうちシンガポール向けは184頭と8割強を占める。購買力の高いシンガポール市場は高級食材の需要が高いと有望視している」と説明。これまでシンガポールではヒレやサーロイン、リブなどステーキの部分だけが売れていた。ステーキ以外の部位を食べる文化があまり浸透していないことが背景にある。牛1頭から取れる食肉部位は300〜350キログラムだが、ステーキ部分は50キログラム程度にとどまる。ステーキ部分以外の部位の消費浸透を目指し、今回の訪問ではしゃぶしゃぶやすき焼きといった日本料理をはじめ、中華料理、西欧料理など現地の好みに合わせた多様な牛肉の調理方法を紹介し、近江牛の認知度向上を目指す。
県では、日本市場が少子高齢化などの影響で市場が縮小している一方、海外ではアジアを中心に富裕層の増加に伴い消費が拡大していることから、近江牛の海外輸出に向けた取り組みを強化している。2007年には滋賀食肉センターを設立し、食品衛生の国際基準HACCP(ハサップ)方式に基づく高品質、安全、新鮮な食品供給を促進。現在はシンガポール、タイ、マカオの3カ国・地域に輸出している。
■年間500頭目標
シンガポール政府は2001年、日本で牛海綿状脳症(BSE)が発生したことを受け、日本産牛肉の輸入を全面禁止していたが、09年に解禁。政府が認定した施設で処理した食肉だけの輸入を認めている。滋賀食肉センターは昨年10月にシンガポールから認定を取得した。「福島第1原発事故の風評被害で輸出が一時低迷したが、シンガポール向けはすでに政府認定を受けていることや、全頭検査で安心・安全ということもあり順調に回復している」(同担当者)という。このほかタイでは先月、初めて近江牛の販売を開始。日系百貨店で開かれた物産展で売り出され、開幕から4日目には完売するほどの人気だった。今後は米国や香港などにも輸出先を広げる意向だ。将来的には年間計500頭の輸出を目標に掲げている。