インドネシア暴動

総選挙は来年1月、ハビビ大統領が発言

■総選挙は来年1月、ハビビ大統領が発言

ハビビ大統領は29日、政治改革を求めるイスラム指導者らと会談した後、総選挙の実施が来年1月になるとの見通しを明らかにした。選挙法など政治関連法の改正に半年はかかることから、来年1月より前の選挙実施はあり得ないという。国権の最高機関である国民協議会(MPR)の臨時総会は、選挙実施前に召集される見通しだ。MPR議員は1千人。国会議員 500人と、スハルト前大統領が指名した各界代表500人から成る。

■民間最大手銀行、銀行再編庁の管轄下に

シャハリル中銀総裁は28日、民間最大手銀行バンク・セントラル・アジア(BCA)を同日午後7時20分から、銀行再編庁(BPPN)の管轄下に置くと発表した。同行は今月中旬に起きた騒乱で焼き打ちなどの被害を受け、さらに業務再開以降は取付け騒ぎが続いたため、中銀からの流動資金が自己資本の200%を超えたというのが理由。シャハリル総裁は、今月18日からこれまでにBCAを含む国内銀行7行に総額20兆ルピアに上る資金を供与したことを明らかにしたが、 BCAの借入額や残る6行の銀行名は明らかにしなかった。

BCAは今後、財政が回復するまで国営銀行バンク・ヌガラ・インドネシア(BNI)およびバンク・ラクヤット・インドネシア(BRI)と提携しなければならない。BPPNは、BCAにスティヨソBRI取締役を筆頭とする経営陣を送り、同行の健全化に取り組む。

シャハリル中銀総裁は、これまでと同様に「国民の預金は政府が100%保証する」と強調。預金者にパニックに陥らないよう呼びかけ、過剰な預金引き出しを自制するよう求めた。また、株主であるスハルト前大統領の長女と長男が、同行から多額の資金を引き出したとの噂について「中銀は以前から監視を続けており、同行株主による資本逃避は全くない」とこれを強く否定した。

BCAは、前大統領の側近と言われた華人系実業家スドノ・サリム氏、およびその親族が株式の約70%を握る。支店数は44カ所。顧客数は800万人を超えると見られている。

なお、米格付機関S&Pは29日、BCAの格付をCCCpiから格付不可能(N.M.)に引き下げた。

本紙記者のインタビューに、BCAポンドックインダ支店で預金引き出しに並んでいたある主婦(41歳)は「BCAのような大きな銀行で取り付け騒ぎが起き、BPPNの管轄下に入るなんて思ってもみなかった。政府は銀行の状態についてきちんと説明すべき。」と答えた。また、自営業の男性(30歳)は「引き出し額が制限されるなんてがっかりだ。預金額が少ない顧客にまで引き出し額を限ることはないだろう。今後は一切BCAを信用しない」と、怒りを抑えきれない様子だった。

■反体制派、IMFに無条件融資を要望

インドネシアを訪問中のIMFのナイス・アジア太平洋担当局長は28日、改革派の指導者らと会談。一般市民の耐乏生活を考慮して対イ融資を無条件に行うこと、内政干渉を控えること、などの要望を受けた。これら改革派の指導者は、経済専門家のエミル・サリム氏や、宗教学者のヌルホリス・マジッド氏、国内第2のイスラム団体ムハマディアのアミン・ライス議長、インドネシア民主党の前総裁であるメガワティ氏。

500人もの犠牲者を出した今月の暴動は、IMFが定めた燃料補助金削減が原因との見方があるが、ナイス局長は燃料・電気料金の引き上げはあくまで政府が決定したもので、IMFは圧力など加えていないと反論した。

ナイス局長は同日、ハビビ大統領とも会談し、経済改革案の中の構造改革を修正する必要はない、金融再編が最も緊急な課題、などの見解を示した。また、実勢為替レートが経済改革案で設定された1米ドル=6000ルピアをはるかに下回っていることなどから、マクロ経済目標を修正する必要があると述べた。

■スハルト前大統領を中傷した政治犯2人を釈放

26日に釈放されたスリ・ビンタン、ムフタル・パクパハンの両氏に続き、28日にはさらに政治犯2人が釈放され、女性活動家3人に対する起訴が撤回された。釈放されたのは、人権団体『ピジャール・ファンデーション』のヌク・スレイマン議長(34歳)と、独立ジャーナリスト連盟の活動家アンディ・シャプトラさん(33歳)。ヌクさんはスハルト大統領(当時)を中傷するステッカーを配付したとして94年に懲役4年の判決を受け、アンディさんは政府の認可なく雑誌を発行し、その中にスハルト大統領のイメージを傷つける記事を掲載したとして、昨年に30カ月の禁固刑を言い渡された。

一方、28日に提訴が取りやめになった女性活動家3人は、カルリナ・レクソノさん、ガディス・アリビア・エフェンディさん、ウィラシ・ノビアナさん。これら3人は今年2月、ミルク価格の高騰に反発してジャカルタの中心街でデモを展開。公序良俗に反するとして起訴されていた。

ムラディ法相は27日、政治犯の釈放を約束したが、65年の軍事クーデター、犯罪、国是パンチャシラ違反に関わる者はその例外とした。地元人権団体のインドネシア法律援護協会などは、政治犯全員の釈放を要求している。

■北スマトラの暴動で死者

北スマトラ州タンジュンバライおよびテルックニブンで27日に始まった暴動は翌28日夜まで続き、1人が混騒乱に巻き込まれて死亡した。このほか、同地の警察は6人が銃撃を受けて重軽傷を負ったとしているが、29日付地元紙『コンパス』は14人の暴徒が撃たれたと伝えている。

この暴動でタンジュンバライでは、ショップハウス169軒が損壊、10軒が焼失、28軒が略奪の被害に遭い、住宅44戸が破壊、17戸が放火された。また、自動車とバイク各2台が焼かれ、別の自動車2台が損壊。銀行やホテル、映画館なども破壊された。同様に、テルックニブンでも建物や自動車、バイクが被害を受けた。

一方、南スラウェシ州ウジュンパンダンの約75キロ南に位置するジュネポントでは、県知事選挙での縁故主義疑惑を糾弾する自由討論会が開かれ、これに参加した約100人の中高生が商店やビルに投石を始めた。50人が逮捕されたが、その後釈放された。

■スハルト一族の資産追及は主観的

スハルト前大統領とその親族の資産調査を求める声が高まっているが、前大統領の異父弟プロボステジョ氏はこれに対して、「国家と国民の資産を横領したといった噂は客観的ではない」と反論した。同氏はスハルト一族を擁護するわけではないと断った上で、スハルト氏は企業株式を保有するいくつかの財団を所有しているが、これらは合法的で、社会への貢献が目的と指摘。また、株式を保有する企業の中には、赤字続きで経営を停止した企業もあると付け加えた。資産の調査を客観的に進めるためには、会社設立の申請先である法務省で資産データを収集するべきだと主張し、スハルト一族も合法的な調査ならば受け入れる用意があると述べた。プロボステジョ氏は「改革を支持してはいるが、改革がスハルト退陣で終わらないよう望んでいる」と発言。また、スハルト氏の近況について「自宅でジョギングや体操などを行っており、いたって健康」と語った。

ビマンタラ・チトラは29日に株主総会を開き、会長のバンバン氏と理事長のインドラ・ルクマナ氏(スハルト前大統領の娘婿)の辞任を承認した。プロボステジョ氏は先に、「バンバン氏は、スハルト親族の資産に関する非客観的な追及に嫌気が指し、ビマンタラ・グループの総帥の座から退く」と述べていた。バンバン氏の後任は、同社理事を務めるピーター・ゴンタ氏。同氏は、今後は経営状態をすべて公開すると強調し、現在300ルピア台にまで落ち込んでいるビマンタラ株の購入をアピールした。

■S&P、格付見通しは悲観的

米格付機関S&Pは、格付CCC+のインドネシアの長期外貨建て国債、およびB-の現地通貨建て国債を、引き続きクレジットウォッチ(変更可能性あり)に置く(悲観的見通し)と発表。この格付は今年1月9日から続いている。また、格付CCC+の上位無担保債券もクレジットウォッチ、見通しは悲観的。政権交代で暴動は減り経済は安定に向かうと予想されるものの、国際通貨基金(IMF)による対イ支援の条件である経済改革に徹底的な政策見直しが必要と判断した。

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